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民事裁判手続等のIT化に関する会長声明

                         民事裁判手続等のIT化に関する会長声明
                                                             令和2年4月17日
                                                          広島司法書士会     
                                                           会 長  湯 澤 俊 樹
1 はじめに
  令和2年2月21日、法制審議会第186回総会において、「近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るとともに、時代に
 即して、民事訴訟制度をより一層、適正かつ迅速なものとし、国民に利用しやすくするという観点から、訴状等のオンライン提出、訴訟記録の電子化、情報
 通信技術を活用した口頭弁論期日の実現など民事訴訟制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。」との諮問がなされた(諮問
 第111号)。
  これにより、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会が設置され、調査審議が行われることとなる。

2 調査審議のスケジュール及び国民への影響
  成長戦略フォローアップ(令和元年6月21日閣議決定)では、「オンライン申立て、訴訟記録の電子化、手数料等の電子納付、ウェブ会議等を用いた関
 係者の出頭を要しない期日の実現等を目指」す、「2022年中の民事訴訟法改正を視野に入れて取り組む」、「ITに習熟しない者の裁判を受ける権利を
 害することがないよう、司法府の協力を得つつ、総合的な対策を検討する」、「ITを用いた新たな運用・制度については、司法府の環境整備に向けた検討
 ・取組を踏まえた上で、段階的に速やかに導入し、法改正を伴うものについては、2023年頃より順次導入する」等とされている。
  そのため、令和4年頃には民事訴訟法が改正され、令和5年頃より、順次、民事裁判手続がIT化されるものと思われる。民事裁判手続のIT化により、
 適正かつ迅速な裁判が実現することが望まれる一方、IT機器を有していない者やITに不慣れな者が、IT化されたメリットを享受できないとすれば、司
 法アクセスの拡充を目的としたIT化が形骸化する恐れがある。

3 本人訴訟当事者の観点からの調査審議の必要性
  本人訴訟を追行する理由は様々であろうが、一例として、金銭事件について見ると、「自分だけでもできると思ったから」が65.0%、「自分で訴訟を
 してみたいと思ったから」が45.0%に及んでいるといった分析がなされている(菅原郁夫「戦後以降の本人訴訟当事者像変遷の素描」(本間靖規ほか
 「民事手続法の比較法的・歴史的研究 河野正憲先生古稀祝賀」所収)197頁(慈学社)参照)。費用面等を理由に代理人を選任しないのではなく、自律的
 な紛争解決を目的として本人訴訟を選択する当事者が相当数存在することが明らかであるといえよう。
  本人訴訟については「訴訟制度の根幹的問題が本人訴訟に現れている」「本人訴訟は、まさに訴訟全般の根幹的問題を考えるための扉なのである」「法や
 訴訟制度は法専門家のものでなく、一般の人々の問題処理の手段でなければならない」といった指摘もなされている(和田仁孝「なぜ本人訴訟か 本人訴訟
 の意義と問題点」(法学セミナー492号53頁))。本人訴訟は、あるべき民事訴訟手続の姿を追求するにあたり、極めて重要であると位置づけることが
 できる。
  したがって、民事訴訟法(IT化関係)部会における調査審議にあたり、本人訴訟当事者である国民が利用しやすい制度とすることを念頭に入れる必要が
 ある。民事裁判手続のIT化は目的ではなく、あくまでも、国民が充実した裁判を受けるための手段である。

4 民事裁判手続がIT化された際の対応
 ⑴ 本人訴訟への対応
   わが国では、本人訴訟の比率が高いため、民事裁判手続がIT化された際、いかにして本人訴訟の当事者がIT化のメリットを受けることができるか、
  また、IT化されたがゆえにデメリットを被ることがないかを検討する必要がある。
   この点、司法書士は、制度発足当初より、本人訴訟当事者からの相談に応じ、裁判書類の作成を通じて、法的支援を提供してきた。
   また、司法書士は、不動産登記申請や商業法人登記申請において、ITを活用し、日常的にオンライン申請を実施している。
   以上より、民事訴訟法が改正され、民事裁判手続がIT化された際、司法書士は、本人訴訟当事者に対し、国民の司法アクセス向上の観点から、裁判書
  類の作成という法的支援のみならず、オンラインによる訴え提起や準備書面の提出等のIT支援を提供することが必要であると考える。
 ⑵ 簡易裁判所における訴訟代理人としての対応
   民事裁判手続のIT化は、国民目線で国民の司法アクセスを向上させ、国民の期待に応える民事訴訟を実現するために行うことを目的としている。同目
  的を達成するためには、業として訴訟代理人となることができる士業者が先鞭をつける必要性がある。
   IT化されたメリットを、広く国民が享受できるよう、司法書士が簡易裁判所における訴訟代理人として訴訟を遂行する際は、積極的にITを活用して
  いくことが重要であると考える。
   また、先述のとおり、司法書士は、登記申請手続の局面で、ITを活用し、日常的にオンライン申請を行っている。オンライン申請で得た経験に基づ
  き、民事裁判手続のIT化のメリットやデメリットの改善に関しても、積極的な提言を行う所存である。

5 当会における基盤の整備
  当会では、国民の司法アクセス向上のため、民事裁判手続がIT化された際の受け皿となる必要性があると認識している。
  そのため、本人訴訟当事者に対し、十分な法的支援及びIT支援を提供することができるよう、研修等を実施する。
  また、簡易裁判所における訴訟代理人として訴訟を遂行する際、ITを活用し、迅速かつ適切な裁判を実現することができるよう、会員への周知を図る。
  加えて、日本司法書士会連合会と連携を図りつつ、IT支援を望む国民に対し、いかなる支援を提供することができるか、積極的な検討を進める予定であ
 る。

6 まとめ
  以上のとおり、当会では、民事裁判手続のIT化により、国民が等しくIT化のメリットを享受できるための整備を行うことを、ここに表明する。

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